私の出産物語
私の妊娠の経過は至って順調でした。血液検査や体重、赤ちゃんの発育状態に何の問題もないまま、予定日を迎えようとしていました。予定日1週間前にはおしるし、2日前には前駆陣痛があり、それと同時に酷い腰痛が始まりました。あまりの腰の痛さに「もしかして私の陣痛は、お腹ではなく腰に来ているのでは?」と思い、予定日とその2日後に病院を受診しましたが、陣痛はおろか、子宮口もほとんど開いていない状態でした。ついには翌週に誘発分娩の予約を入れ、陣痛待ちをすることに。そして予定日を5日過ぎた日の朝。私は腰痛で何日もまともに眠れておらず、吐き気がしていました。とにかくすこしでも楽になりたいと思い、わざと浅く湯をはったお風呂に横になるように入浴してウトウトとしていました。風呂からあがり、「いつ分娩になってもいいように何か食べなくては」と思いましたが、食パンを半分食べるのがやっと。もう食べる気力すら残っていませんでした。「こんな状態でいきめるのだろうか‥」そう思いながら布団に横になりました。案の定また痛みで寝ることは出来ず、2時間程ゴロゴロとしていると、突然、水が出る感じが。「まさか、破水した⁉︎」と思いトイレへ。病院から頂いたしおりに「羊水は生臭い臭いがある」と書いてあったのを思い出し、臭いを嗅いでみます。しかし、横になって風呂に入ったせいか、お湯のにおいしかしません。すぐに止まったし破水ではないかと思いつつも、ナプキンを敷き、まさかに備えることに。そしてしばらくするとまた「ザバッ」と水が出る感じが。先程より多く感じたのと、止めようと思っても止まらなかったことで「破水した!」と確信しました。陣痛タクシー、産院、旦那に連絡を入れ、病院に向かいました。病院ではすぐに問診、内診、体重測定、尿検査を行い、やはり破水しているとの事で入院になりました。驚いたのは、ここ何日もろくに眠れず食べれてもいなかったので、ほんの数日で体重が4キロ近く減っていた事です。破水したことで24時間以内に分娩しなければならず、陣痛促進剤が投与されることになりましたが、これで分娩する事になっても、いきむ体力が残っていないのではないかと不安で仕方ありませんでした。2時間程モニターをつけ様子を見ていましたが、陣痛が中々来なかったため、主治医から帝王切開の説明を受ける事になりました。ちょうど旦那が病院に到着したので一緒に説明を受けます。「腰から麻酔をします。4回程針が刺さる痛みがあります。お腹は15センチ程縦に切ります。お腹を切って子宮を切って赤ちゃんを取り出します。おおよそ30分前後で赤ちゃんに会えます。」眠さと痛みで朦朧としながら説明を聞いていたその時、「バシャ」っとまた破水しました。分娩台に上がる前に助産師さんにつけて頂いた産褥ナプキンからはみ出るほどのすごい量でした。「先生!また水が出ました!」私が言うと、助産師さんがすぐに布団をめくりみてくれました。先生はそれを見て「もうお水の色が変色してますね。赤ちゃんの命が危ないので、すぐにお腹切ります。ここにサインしてください。」サインをして、見せて頂いた産褥ナプキンの色は、薄く緑色になっていました。そこからは本当にバタバタと手術の準備が始まりました。剃毛をされ、手術着にされ、帽子や酸素マスクをつけられて分娩台から動くベッドに乗せられます。横で見ていた旦那の顔はみるみる青白くなり、不安そうに私を見ていました。それでも旦那は「大丈夫、今は5人に1人は帝王切開なんだって。ここは大きい病院だから大丈夫だよ」と私に言ってくれました。内心私は「これでやっとこの腰痛から解放される。やっぱりいきむ体力がなかったから、赤ちゃんが私を思って帝王切開を選んでくれた」とホッとしていました。手術室に入ると全裸にされ、体を屈める体制に押さえつけられるようにして腰に半身麻酔をされました。「痛みはないけど、触られる感覚はありますよ」と言われましたが、私は麻酔がよく効いたのか、何をされているのかほとんどわからないまま、あっという間に切られて赤ちゃんが出されました。出されてすぐは泣かず、一瞬ドキドキしましたが、すぐに泣き声が聞こえ、本当にホッと安心しました。綺麗に拭かれ、顔の横に赤ちゃんが来た時は、何と言うか、言葉にならず「‥髪、フサフサ」と言うのがやっとでした。胎盤の処理やお腹を縫ってもらいながら「あんなに大きい子がお腹の中に本当にいたんだ」と不思議な気持ちになりました。無事手術が終わり、手術室から出ると、旦那が満面の笑みで迎えてくれました。「30分位で終了する」と思っていたらしく、中々出て来ないので、何かあったのかと思っていたそうです。私は、赤ちゃんを見た瞬間と、旦那の安心したあの顔が忘れられません。
私は緊急帝王切開での出産になりました。会陰切開って痛いのかな、陣痛ってどんなかな?と思っていたことは全て未経験に終わりました。まさか自分が帝王切開で出産するなんて思ってもいませんでしたが、あの時の体の状態を考えると、「帝王切開で無事に赤ちゃんに会えて良かった」と思います。「どうやって生まれてくるのかは赤ちゃんが決める」。これが本当だとしたら、我が子は実に親孝行だな、と、より愛おしく感じます。どんな形でも立派な出産です。どうお産が進んでも、それは赤ちゃんか選んでくれたと思って頑張ってください