あっという間でママも赤ちゃんもビックリ!
39週5日の朝6時半。弱い腹痛で目が覚めました。お腹が冷えたのかな?という程度のものでトイレに行くほどの痛みでもなく、いつもどおり上の子の幼稚園のお弁当を作り始めました。7時を過ぎ、ふと気がつくと腰に手を当てて時折フーフー言っていました。お腹ではなく、腰が痛い。でも座るほどでもない。というわけで、「立ちっぱなしでときどき腰に手を当てフーフー」状態が7時40分頃まで続きました。夫には「もしかしたら今日お産になるかも」と言っておきましたが、元々お腹が張りやすく、妊娠中期からフーフー言うことの多かった私はまるで信用してもらえず、私自身もこの腰痛が陣痛なのか確信が持てずにいました。
夫と上の子を送り出し、8時過ぎに一息つこうとロッキングチェアに腰掛け、TVを見始めました。ところがどうも落ち着かない。先ほどまでより強い腰痛が、頻繁にやってくるのです。すぐに座っていられなくなりTVの時計を睨みながら間隔を計ってみることにしました。2分、4分、8分、2分…完全にデタラメでした。これは本陣痛ではないな、でも今日中に本陣痛が来るかもしれないからなどと考え、ゴミ出しの準備をしたり入院グッズの入ったキャリーケースを玄関に用意したりしながら、リビングだけでも掃除機をかけようと思った途端、ゴリっ、と今までにない強い力が腰骨の下の方に加わり、うずくまってしまいました。あ、これはいかん、やっぱり本陣痛だ、と確信した私は、すぐ病院に電話をしました。陣痛の間隔は相変わらずデタラメでしたし痛みもそこまで強くありませんでしたので、電話をしている間も至って冷静・穏やかで、私のその様子から助産師さんは「お産はまだ先だと思うけど…また帰ってもらうことになるかも。それでも良ければ来てください」という返答でした。私はそれでも良いからとりあえず子宮口の開き具合を診てもらおう(37週の終わりから子宮口が3センチ開いていました)、少しでも伸展しているといいな、ぐらいの気持ちでタクシーを呼びました。
妊婦さん専用のタクシーを予め予約してあったので、5分程度で来てくれたと思うのですが、もうその頃には陣痛の間隔を計ることがどうでも良くなるくらいの痛みと頻度になっていました。それでも1人でしたので、キャリーケースにもたれかかるようにしながらエレベーターで玄関に向かい、乗車。車内で産後の手伝いを頼んでいた義母にメールをし、上の子の幼稚園に電話をしました。15分ほどで病院に到着。玄関のところで1度床にうずくまってしまい、外来の案内に立っていた看護師さんに「大丈夫?車椅子必要ですか?」と訊かれましたが「いや、大丈夫です」と断って2階の産科外来までキャリーケースを押しながら向かいました。
時間は9時で、ちょうど外来の診察がスタートしたタイミングでした。診察を待つ妊婦さんも多くスタッフもまだ揃ったばかりでざわついていて、来院を告げても「血圧を計ってお待ちください」としか言われず。痛みは強く頻繁になっていたもののまだ逃せる程度だったので、フーフー言いながら血圧を計ると上が150を超えていてびっくり。数値が印刷された紙を事務スタッフに手渡した後は空席がなかったので立ったまま待っていました。10分ほど経ってようやく事務スタッフが中待合に通してくれたのですが、その頃にはもう座っていられず、立ったまま痛みを逃すのが精一杯でした。陣痛間隔は1-2分だったと思います。それから5分ほどで診察室ではなく内診室に直接入ったのですが、そこで助産師さんに内診してもらってすぐ「たけのこちゃん、ここまでよく頑張ったねー、痛かったでしょ。もう全開だよ、赤ちゃんの頭も触れる。」と言われた途端、張り詰めていたものが一気に溢れ、号泣してしまいました。生理2日目を超える量の鮮血も出ていました。
言葉もなく泣きながらフーフー言う声を聞いて、隣の診察室にいた外来担当のドクターは冷静に「あ、全開でしょ」と言っていましたが、助産師さんは大慌てで病棟の助産師さんに電話をしていました。赤ちゃんの頭がもうすぐそこまで出てきているので、このまま分娩室に向かうとのこと。1人で来院していたのでキャリーケースも靴もそこに置いたまま、車椅子を押して走ってきた助産師さんに有無を言わせない勢いで車椅子に乗せられ、外来を全速力で移動しました。
分娩室に入るなり全裸にされ、手術着も適当に被せられ、とりあえず仰向けに分娩台に乗りました(その後きちんと着せてもらいました)。分娩を介助してくれるメインの助産師さん以外にも5,6人がどっと入ってきて、大急ぎで点滴のルート確保や消毒等をされます。私も痛みのないときは全く落ち着いていて元気でしたので、口頭で既往症の確認をしたり軽口をたたいたりしていました。確かに腰は痛いのですが、いきみたい感じは全くありませんでした。そのため、助産師さんに「2回(のいきみ)で出るよ」と言われてもピンと来ず。1回いきんだ後その旨伝えると手で破膜をしてくれました。そこで一気にいきみたい、出したい!という感覚が出て1度大きくいきむと同時に赤ちゃんが出てきてくれました。あっという間の出来事で心も身体も追いつかず、当時の印象は感動というよりびっくりという方が正しいかもしれません。赤ちゃんも同じだったようで、3500グラムを超える大きながっしり赤ちゃんでしたが、慌てて外に出てきてしまったせいで呼吸が落ち着かず、20分ほど隣に置かれたベッドで酸素マスクをつけて看護師さんにケアをしていただきました。
ちなみに、そんなドタバタの出産でしたのでもちろん会陰切開はありませんでした。助産師さん曰く、赤ちゃんが大きくてがっしりしているので肩が引っかかって少し裂けてしまったとのこと。縫合はドクターがしてくださいましたが、私はこの縫われている感覚(部分麻酔あり)が苦手でした。また、分娩後に子宮の収縮があまり良くなかったようでドクターが子宮に手を入れ、お腹の上からも同時に圧迫して止血するということをされたのですが、これが何とも気持ち悪く、陣痛・分娩がとても楽だったので余計に辛く感じました。
助産師さんに赤ちゃんとの写真を撮ってもらったり分娩台から夫や実母・義母にメールや電話をした後、2時間ほどそのまま休みます。暖かな日差しの降り注ぐ静かな分娩台で赤ちゃんを抱っこしながら過ごした時間は一生の宝物です。家族は皆あっという間の赤ちゃん誕生に呆気にとられていました。私や赤ちゃんだけでなく、周囲も皆、お産のスピードに意識が追いついていなかったのでしょうね。
出産は本当に神秘的だなと思います。赤ちゃんが産まれてくるタイミングは、赤ちゃんが決めるものなんだと今回の妊娠出産を経て改めて感じました。いつ陣痛が来るのかわからないからママはドキドキするし不安だし怖いかもしれません。でも陣痛の間、「赤ちゃんがママに会いにお外に出て来たいと思ってくれているんだ」「陣痛が強くなればなるほど、赤ちゃんに会えるまでの時間が短くなる。もう少しもう少し!」と自分に言い聞かせていたら不思議と痛いとか辛いというネガティブな感情は湧いてこなくなりました。是非ぜひ、皆さんもお試しください、そして良いお産ができますように。